詠美はミンジュンの笑顔を初めて見た気がした。
やっぱり、癒し系俳優で有名だったミンジュンの笑顔は、世界を跪かせるくらいに素敵過ぎる。
「荷物は?」
ミンジュンはまたどこか自分の世界へ行きそうな詠美をこの現実に呼び戻す。
「荷物はこれだけですけど…」
詠美は肩にかけているバッグをミンジュンに見せ、肩をすくめて笑った。
「一時間後、車で詠美の家まで荷物を取りに行く。
お前もここに泊まるんだ。分かったか?」
詠美はあまりの驚きに大きい目をますます見開いた。
「え? そんな事聞いてません。
派遣会社からもらった契約書にもそんな記載はありませんでした」
ミンジュンはくるくる回る詠美の瞳をずっと見ていた。
顔にあるそれぞれのパーツがアンバランスでちょっと残念と思っていたが、中々よく見るとそれはそれで魅力的だ。
「契約書?
そんなのあってないようなもの。
俺が決めた事が、全て決まりになる。
だから、詠美は俺の秘書でマネージャーでメイドに任命する。
メイドはいつでもご主人様の近くにいるもんだろ?」
またメイドかい…?
「嫌だって言ったら?」
詠美はこう見えてもちゃきちゃきの江戸っ子だ。
義理と人情には厚く曲がったものは大嫌いという、江戸っ子気質は女の子でも健在だ。



