ミンジュンが部屋に戻ると、詠美は何か料理をしているのか、甘くて香ばしい匂いが部屋に漂っている。

ミンジュンはキッチンに立っている詠美を後ろから抱きしめた。


「おかえり、ミンジュンさん」


詠美はそう言うと、ミンジュンに軽くキスをする。


「ただいま…」


このままごとみたいな今の生活を俺はやっぱり手離したくない。
でも、これ以上欲張る事を神様は許してくれるのか…


「何を作ってるの?」


ミンジュンがキッチンを覗きこんでそう聞くと、詠美はペロッと舌を出した。


「今日、実家に帰ったら、お父さんが美味しいお餅が手に入ったからミンジュンさんに食べさせてって。

詠美おばちゃんが、きな粉や醤油や焼きのりやら全部持たせてくれたんだけど…」


ミンジュンは真っ黒に焦げた物体が餅だということが今気付いた。


「ここにあるオーブンが外国製だから全然加減が分かんなくて、もうこんなに焦がしちゃった…」


ミンジュンは適当にオーブンに餅をのせ、英語で書かれている説明書をパラパラと読んで、詠美が触った事のないボタンを2回押した。


「多分、これで大丈夫」


詠美は気持ちよく膨らんでいく餅を見て感動した。