詠美がそう思った視線の先に、日本でナンバーワンと言われる超豪華ホテル“オリエンタルイースト東京”が見えてきた。
ホテルに着くと、後を付けてきた車から大男達が出てきてたくさんの荷物を運び出す。
どうやら、ミンジュンの会社の人間らしい。
詠美はとりあえずミンジュンに何をすればいいか聞いてみた。
「詠美は通訳で雇ってるけど、俺のマネージャーも兼ねてるから。
日本の言葉にいい言葉があるじゃないか。
ご主人様、行ってらっしゃいませだっけ?
通訳、マネージャー、メイド、召使、全てをやってくれ」
…承知しました、ご主人様。
なんて、口が裂けても言いません!
詠美はうんともすんとも言わず、そこに置いている荷物を持ち上げた。
雇われている以上、仕事はちゃんとやる、それは曲げない。
…重っ。
詠美は腰をやられそうになり少しバランスを崩した。
すると、すっと軽くなったと思った瞬間、ミンジュンがその荷物を持っていた。
「女の子はそんな事しなくていい」
いい奴なのか悪い奴なのか分からない。
でも、綺麗な顔とちょっとだけたどたどしい日本語は、私の心をしつこい程にかき乱す。



