「シッ」
詠美はそう言うと誰も見ていない事を確信してから、ミンジュンのいる試着室へ入った。
詠美はその三つ編み風の髪の束を何本も出して、ミンジュンの帽子の中に隠れている髪にその束を絡め結び付けた。
そして、大きめののニット帽をざっくりとかぶせ、その姿を確認してから詠美はまた紙袋から何かを取り出す。
「はい、ミンジュンさん、このサングラスをかけて下さい」
ミンジュンは詠美に言われるがままそのサングラスをかけると、
「ほら、レゲエミンジュンの出来上がり!
これだけいかつかったら、ミンジュン王子の面影はどこにも見えない」
ミンジュンは自分の姿を見て、ガックリ肩を落とした。
サングラスはまん丸で、まるでジョンレノンのようだ。
「詠美…
逆に目立つ気がするんだけど…」
詠美は狭い試着室の中で飛び跳ねるくらいに喜んでいる。
「目立ちません!
鎌倉は外国人の観光客が多いから、こんな人なんて普通に歩いてますよ。
それより、超嬉しい…
こういう事があるかもしれないって、このアイテムを買ってたんです。
毎日、持ち歩いてて本当に良かった~」
詠美はミンジュンのつけ毛を何度もチェックしながら、自己満足に浸っている。
「じゃ、そろそろ行きましょうか?
出発進行~~」
ミンジュンはこんな事なら引き返したいと思った。
でも、そんな事は口が裂けても言えない。
ミンジュンはもう一度自分の変わり果てた姿を見て、レゲエ風に微笑んでみた。
イケるかも…
元々持っている役者魂に久々に火が付いた。



