詠美の心臓は多分一回破裂した。
それ位の凄まじい衝撃だった。
そしてまた、詠美の心臓は、二回目の破裂をしようとドキドキの高鳴りが地雷のように響いている。
「ミ、ミ、ミ…… ミンジュンさんです…か?」
韓国語の通訳として雇われたのに、思いっきり日本語で話していることさえも気付いていない愚かな私がいる。
ミンジュンって……
韓流好きな日本人以外でも誰でもが知っている有名な韓国人俳優で、甘いマスクに鍛えられた体、そして何よりもセクシーな声、韓国で爆発的に人気を得て、韓流ブームに乗っかり日本のドラマやCMにも数多く出演した。
でも確かそれが8年位前の話で、日本での活動を1年ちょっとやったミンジュンは、27歳の自身の誕生日を機に表舞台から姿を消した。
詠美自身はミンジュンファンではなかったが、何しろおば様方の人気がすごく例にもれず詠美の叔母の美沙も、つま先から頭のてっぺんまでミンジュンに染まっていた。
今、真横にミンジュンがいる…
いや、もしかして、ミンジュンのそっくりさん?
あのブームの頃は、猫も杓子もミンジュンのモノマネをしていた。
そうじゃないと思いながらも、詠美はミンジュンの顔を覗きこんで見てみた。



