詠美はうんともすんとも言わず、大きな目に涙を浮かべるだけだ。
「テヒョンか? ジノか?
俺のする事に文句をつける奴は、その二人くらいしか思い当たらない」
詠美はそれでも何も言わない。
ミンジュンは大きくため息をつき、持っていたスプーンをテーブルに置いた。
スマホを取り出しテヒョンかジノかに電話をしようとすると、詠美がやっと口を開いた。
「一番最後に交わした恋人になる契約は…
私とセックスがしたいから…ですか?」
詠美はほとほと自分が嫌になった。
隠し事ができない性格は決して嫌いじゃないが、でもこのシチュエーションでバカ正直は大人の対応としてはあり得ない。
ミンジュンは合点がいったような鋭い笑みを浮かべ、詠美の事をジッと見ている。
「この仕事が終わるまで俺の恋人になるっていうのは、確か、テヒョンを救うための取り引きだったっけ?」
「…はい」
詠美は小さくそう言ってまた下を向く。
ミンジュンは、詠美の顎を持っていた手にスマホを持ち変えた。
素早くスクロールしながら誰かに電話をする。
詠美は嫌な予感がした。
ミンジュンの性格は狼のように鋭くて、怒らせたら手が付けられない。
「ジノか? 俺だ。
テヒョンは、今日付けでクビだ。
明日には、韓国へ返せ、いいな」



