「お前、今日から俺のニセカノな。」



聞きなれないワードが頭に侵入して来た。


「に、ニセカノって、偽物の彼女?」

確認を取るため問う。

「ったりめーだろ。それ以外になにがあるんだよ?」

小首をかしげ、優雅に微笑む久世くんに、少々キュンときてしまった。

「でもっ、なんで私が久世くんの彼女なんてしなきゃいけないの?」

「彼女じゃねぇ。彼女役な。」

そこを強めて言う久世くんに、小さな疑問を抱きながらも、黙っておく。

「めんどくせぇんだよ、女なんて。」

久世くんはそう呟いた。

「私だって女なんだけど。」

「性格の問題だ。」


ああ、なるほど。


それならひとつ、心当たりがある。

私の後ろの席で、久世くんの通路を挟んで隣の席の縞根 凛那(しまね りんな)だ。

凛那はあまり相性が合う子が少ない。

ちなみに、私も久世くんも合わない。

「アイツ、いつもよってくるから気持ちワリぃんだよ。」


確かにそうだ。


凛那はいつも久世くんにべったりで、離れようとしない。

「久世くん、気にしてないと思ってた。」

「んなわけあるか。」

短く返す。

「私は凛那よけってわけね。」

納得したように、腕組みをしてみせる。

「そーいうこと。このノートのこと、秘密にしてやっから、彼女しろよ?」

そういうことなら、いいけど。というか

「私、脅されてるよね?」

「今頃気づいたか。」

久世くんは涼しい顔で答える。


ええっ・・・。
面倒なんだけど・・・。