靴箱には小さく折りたたまれた紙が。


またか。


私はそう想いながらバッグの中に紙を入れた。





私は、花岡中学校1年の色衣 まどか。

平凡な中学生だ。

私の靴箱には、いつも紙が入れられている。

少し怖くて、1枚も読んだことは無いけど。


さすがに読まないとマズいかな・・・。


教室に向かいながら、ぼんやりと考える。





「おはよー。」

教室に入り挨拶をすると、少数の女子が明るく返してくれる。

「おはよ、まどか!また手紙入ってた?」

そう声をかけてきたのは、濡れるような黒髪を後ろでひとつにまとめ、
元気少女の印象で溢れる古泉 天音(こいずみ あまね)。

「もう、天音ったら。毎日毎日同じこと聞いて楽しいの?」

私は返し、バッグを机に置く。

「あっはは。まあ、そこそこ?」

大雑把な天音に対し、静かに席で読書をする、春日野 恋美(かすがの れんみ)ちゃん。

「恋美たん、おはよ。」

私は恋美ちゃんのことを、『恋美たん』と呼んでいる。

「ふふっ。おはよ、まどかちゃん。」

可憐で清楚で超乙女。

それが春日野 恋美という少女なのだ。



「あの~、そろそろ返していただけます?」

私の小説用ノートを手でぷらんぷらんと揺らすクラスメイトの久世 翔磨(くぜ しょうま)
は、勝ち誇ったような笑みを向ける。

どしよ。

「お前の弱点、みーっけ。」

「あの、返してくださいっ!」

返してくれそうに無い久世くんは、以外にも恐ろしい物だった。

「返して欲しかったら、俺と契約しろ。」

「・・・はい!?」