壁の絵の場所に眼を向けるが、そこには何もなかった。

「あそこにあった絵は?」

「先程、引き取りに来られましたよ。可愛い坊やがね」


 きっと、それはあの男の子だろう。

 あれは、あの思い出の世界に導く入り口だったのかもしれない。


「雨、止んだようですね」

 窓からは日が差し込んでいた。

「マスター、ごちそうさまでした」

「いいえ。あっ、御代は要りませんよ。」

 入り口へと向かった。

 振り返ると、マスターが笑顔で見送ってくれた。


 約束の日は2日後の土曜日。

 彼もきっと覚えているだろう。

 夢に出てくるほどだから。



 そして。

 約束の場所にやってきた。

 イチョウはまだ微かに黄色になったばかり。

 木の根元には人影。

 ここからまた新たなストーリーが始まる。