すべての記憶が一気に流れてきた。

 何で今まで忘れていたんだろう。

 子供の頃の小さな約束。

 あれから私も別の場所に引っ越して、その存在も何もかもを忘れてしまっていた。

「ありがとう。思い出させてくれて」

 目の前にいるのは記憶の中の彼。

 次に会うのは、10年後の彼だ。

「これ、あげるね」

 差し出されたのはイチョウの木の絵。

 その絵を受け取った瞬間、風が吹いた。

 目の前をイチョウの葉が舞っていく。

 思わず目を閉じた。



 急に体が重くなった。

 目を開けると、目の前にいるのはマスターだった。

「あれ?」

「どうやら、あの絵の中を旅してきたようですね」

 ふわりと落ちてきたもの。

 カウンターテーブルに落ちたのは、一枚の葉。

「探し物は見つかりましたか?」

「はい」

 見つけた。

 心の奥にしまわれた、大事な思い出。