「どうしたの?今日は元気ないじゃない」

 会社の同僚にそう言われた。

「ちょっと、体調がね」

 そう言って誤魔化したが、あの夢のせいだということは自分がよくわかっている。

「顔色も悪いし、帰ったほうがいいかもよ」

「うん。そうする」

 上司に言って、帰ることにした。



 午後の街。

 どんよりと曇った空。

 雨が降りそうだなぁなんて考えながら歩いていた。

「あれ?」

 気がつくと、知らない道を歩いていた。

 どこで道を間違えたのだろう。

 会社から駅までは迷うはずのない、通い慣れた道のはずなのに。

 歩いている人が誰もいない。

 別の世界に来てしまったような気分に襲われた。



 ポツンと頬に水滴が当たった。

 雨だ。

 見渡すとひさしのある場所を見つけた。

 そこへと駆け込んだ。