粉雪が降るあの日の冬。
君は消えてしまったの。
まるで、粉雪のように…静かに降って
静かに溶けていった…
誰にも気づかれず…
今までありがとう。
君がいてくれたから、私は幸せでした。





絶対

ピピピピッ。ピピピピッ。
目覚ましの音。いつもの朝だ。
「…ふぁぁ………うぅ…寒い…」
いつも通り、私は部屋のカーテンを開けた。
「…わぁ…雪だ…!」
窓の外を見ると美しい、一面の白い景色が広がっていた。初雪だ。
私は嬉しくて、小学生のように喜んでいた。



高校2年生の冬。私は普通の高校生活を送っていた。
「真冬~!おはよ~!今日は寒いね~!」
「あぁ…梓…おはよ。寒いね。」
「いや~今日は初雪が降ったね~!
嬉しい~!」
「もう~梓は小学生みたいなんだから~」
「えぇ~もう!みんなもそうでしょ!

こんな会話を続けながら、私達は、教室へ入っていった。
「おはよ。真冬」
「おはよ。粉雪」
同じクラスで、隣の席の鈴村粉雪(すずむらこゆき)
私のクラスでは、かなりの美少年らしい。
確かに、髪はサラサラで綺麗な黒髪、氷のように輝く瞳。
プルプルで潤っている唇、カサついていない綺麗な白い肌。本当に、雪のように白い。名前にあっていると思う。
しかも彼は、すごくモテる。
内面的にも優しい彼は、先輩からも後輩からもモテるという。
色々な女子に優しくしてくれるので、評判が良い。
もし粉雪を好きになればライバルは多いだろう。
多分私は、粉雪のことを好きになることは無いだろう。
今まで私は人を好きになったことがない。
もはや、『好き』という感情が分からない。友達から聞くには、その人のことを考えると胸がドキドキしたり、その人のことばっかりになる、と。
そんなこと、考えた事もなかった。
しかし、そんなこと、憧れてもいなかった。
恋の感情を知りたいなんて思ったこともなかった。付き合ってる人達が憧れとか、好きな人を見つめる真っ直ぐな瞳が羨ましい訳では無かった。
「…ねぇ、恋って、どんな感じだと思う?」
気づけば私は、その疑問を口にしていた。
「…は?……恋…?」
「そう…恋。」
「…知らない。俺だって、恋した事ないし。でも、楽しいもんなんじゃねぇの?」
意外なことに、粉雪は恋をしたことが無いという。あんなにモテるのに。
「…楽しい…か……粉雪は、誰かと付き合ったこと、無いの?」
「…無いよ。」
「嘘だ。だって粉雪、モテるじゃん。

「モテねぇわ!しかも、嘘じゃねぇよ!!」
「ホントに~?慣れてんじゃないの~?告白されるのとか~」
「…告白されたこと、無いよ。」
「…えっ!?絶対嘘だ。」
「俺、あんま、そんな感情とか、知らねぇし。」
「…そうなんだ…」
「……恋なんて、しても仕方が無いだろ…ずっと一緒にいようって言っても、それは絶対じゃないんだよな…永遠とか、絶対なんて、無いんだよ。」
粉雪の意味深な言葉に、私は少し同情した。
『絶対』なんて、無い。
いつか好きな人ができたとしても、絶対、一生好きでいる、なんて約束は出来ない。
今まで私はそれを恐れていたのかもしれない。
『絶対』の言葉が信用出来ないから。