愛言葉

いつの間にか日は暮れ、私たちは解散することにした。
「また今度遊ぼうね! めっちゃ楽しかった!」
私が言うと、「また遊びたいねー」「高校入っても仲良くしような」と、みんなが口々に言った。
みんなに手を振って、それぞれの帰路についた。
私と理仁は家が近所のため、一緒に帰ることになった。
「…ねぇ、理仁」
私が口を開くと、理仁は「あ?」と、素っ気ない返事をした。
「今好きな人っているの?」
いつもする会話のように、何気なく私は聞いた。
「あー、気になる人ならいるけど」
理仁は、頭をかきながら照れくさそうに言った。
私は知っている。理仁に好きな人がいることなんて。
そっかー、と私は下を向きながら、独り言のようにつぶやいた。
「そうそう。前、私好きな人いるって言ったじゃん。その好きな人教えてあげるよ」
私は理仁の顔を見て、笑顔で言った。
「お、マジか! 誰?」
理仁は目を輝かせて私の次の言葉を待っている。
「…理仁だよ」
私は笑みを浮かべながら言った。
理仁の反応なんて目に見えている。きっと、返事に困って苦笑いをするんだろう。
でも、その予想は大きく外れた。
「え? マジ? は? 待って、えっ?」
理仁は、手で口元を押さえながら、かなり動揺した様子だった。
その顔には笑みさえ浮かんでいる。
「こんな嘘つかないよ、私そんなひどい人じゃない」
私はつられて笑顔を浮かべると、冗談交じりの言葉を口にした。
「あとね、理仁にあげたバレンタインチョコ、あれ本命なんだよ」
私が続けると、理仁は「マジか、えっ、まだ状況が把握できない」と、また動揺していた。
その様子がなんだか可笑しくて、私はまた笑った。
「で、理仁の気になる人は誰なの?」
私はそれが1番気になっていた。
「みのり、って言ってほしいんでしょ?」
理仁はおどけたように笑って言った。
「べ、別にそんなことないし!」と、いつの間にか私は嘘をついていた。
その後しばらく雑談をしていると、あっという間に理仁の家の前に着いた。
理仁は「またね」と言い、私に背を向けた。
「ねぇ、結局理仁の気になる人が誰なのか教えてもらってないんだけど」
私がすねたように言うと、理仁は私の方に顔を向けた。
「だから、俺の気になる人はお前だって言ってんだろ? …面倒なことになるから詳しくはメールで話す」
理仁はまた私に背を向け、手をひらひらさせながら家の中に入っていった。
理仁の気になる人が私?そんなの全然気づかなかった。だって理仁はそんな素振り見せたことなかったし…。
私は1人で考えていた。家までの道が、ひどく長く感じた。