『もう少し近く寄れば?いちいち大声出すの疲れね?』

「そ、そ、そんなことないです。これが私の精一杯です!!」

そうだ、この距離でも嫌なのにこれ以上近づけるわけがない。唯一私が近付ける家族以外の男の人は、健太君だけだ。健太君の時もだいぶ時間がかかった。
桜ちゃんに彼氏がいることを教えてもらったとき、その彼氏さんが私と仲良くしたいことも教えてもらった。

最初は、絶対に無理だと思った。あの頃は、お兄ちゃんですら怖かった。でも、健太君はあきらめなかった。毎日毎日、部屋にふさぎ込んでいる私に会いに来てくれた。私が暴れようが、どんなに悪い言葉を投げつけようが、気にせずに。桜ちゃんも予定の合う日は、健太君と一緒に来てくれた。