そんな時、コツン、とわたしの額に何かが当たった。

「え…。」

拾ってみるとそれは紙飛行機。

なんでこんなところに…。

わたしは辺りを見回す。

「…びっくりした?」

ふと低音な声が聞こえてわたしは驚いて振り返る。

すると背後には、そんなわたしを見ておかしそうにお腹を抱えて笑う人がいた。


わたしが目を見張る中、彼はぎゃははって声を上げながら紙飛行機を拾い上げる。


「ハハっ、おもしれえ!」


彼の名は、結城悠。


名前までもなんか変。


ゆうきゆうって、言いにくい。


「なーにしてんの?」


彼は勝手に隣に腰をかけた。


ふわっとお日様の匂いが鼻をくすぐる。


そっちこそ、なにしてるの?


話しかけられることなんてないから、どぎまぎしながら彼を見つめ返す。


なんて答えたらいいのかわからない。


だからわたしはただ、桜の花びらを拾って差し出した。


「桜?」


普通だったら引いちゃうと思う。


だけど君はむしろ嬉しそうにその花びらを受け取った。


「うん。」


わたしは頷いた。


だって、ほかになんて言えばいいの?


こういうときに、まるでソーダみたい言葉がシュワっと泡になってポンポンと飛び出してくればいいのに。

わたしの言葉は、まるで炭酸の抜けた生ぬるい飲み物みたいで、泡がはじけることなく隠れている。

甘い水に残るのは焦りと戸惑いと劣等感。

それを掛け合わした苦い何かが胸に広がって、伏せ目がちに、桜の花びらを受け取った彼の手元に視線を泳がす。