横断歩道のど真ん中。 まるで流れる川の中の一つの小石のように、 わたしの周りを人々が何事もないように流れてゆく。 そんななか、わたしだけ動けない。 桜…桜…桜… いろんな記憶が脳を駆け巡り、頬を滑り落ちる涙を止めることもできず、 ただ、何もできずに立っていた。 そんな時だった。 桃色のベールの世界に溺れるわたしの中に、鋭い音が響き渡った。