HEROに花束を(完)


制服の胸ポケットから今年の桜の花びらを取り出す。


まだ微かに鼻をかすめる、甘酸っぱい春の香り。


小さく踊る桃色のカーテンの向こう側には、優しく笑う君がいる。


ちょうど一年前、初めて君に出会った時、君は心から溢れ出る魔法の光を放っていた。


それは自分が楽しければ楽しいほどみんなもわくわくしだしてしまう、悠にしかない幸せの力。


それが、去年の春、高校生になったばかりの君。

まだ着慣れないパリッとした真新しい制服を着て、ふわっと笑っていた君。



ーそれなら、来年の君はどうだろう。



来年はきっと、もう高校三年生になったんだねって語り合って。


そろそろ進路をちゃんと決めないといけないね、


なんてわたしたちにしてはらしくない真剣な話をしてみたりして。