「あっ、あやなんとかさんのこと?」


「綾瀬さんだよ。」


「えっ、あの二人って仲よかったんだっけ?」


「あ、でも誰かが二人がお弁当食べてるの見たって言ってた。」


「うそ、なにそれ!あの地味な子と?」



いやでもみんなのささやき声が聞こえてしまう。


わたしは顔を若干歪めて悠のことを見上げた。


きっと悠はわたしの表情の変化に気づいているはず。


どうして、そんなことをするの?


どうして、わたしを無理やり連れて行こうとするの?


わたしの気持ち、知ってるでしょう?


だったらなんで…


だけど勇気のないわたしは、みんなの注目を浴びている中、言葉を何も発することができない。


きっと数秒のことだったのだろうけれど、わたしは永遠と悠と見つめ合っているような気がした。


『わたしは、行かない。』



そう目力で伝えようとしたけれど、


悠はそんなわたしを無視し、ニコッと不敵に笑った。