頭に何かが触れる。
「泣くなよ…。」
悠の大きな骨ばった手が、そっとわたしの髪の毛を撫でる。
なんでっ、弱っている君に…わたしが慰められてるのっ?
ばかばかばかっ、わたしが弱くてどうするの?
「穂花…お前は、約束を破ってなんかない。」
「っ…ぇ?」
「だって、お前来てくれただろ。桜が満開の時、桜の花びら持って、来てくれたじゃねーかよ。」
「っ…気づいてたの?」
「お前に知られたくねーって思ってたのに、俺…追いかえせなかった…ほんっと、だっせえよな、寝てるふりとか。」
だったら、わたしがキスしたのも…気づいてたんだ。
声にならない羞恥と恐れと……なぜか、喜びが入り混じった。
「だから、俺はそれで十分なんだよ。約束、穂花がちゃんと守ってくれたから。」
「そんなっ、」
「来年の桜は、もういいよ。」
「悠っ…」
「俺、十分幸せだから。」


