HEROに花束を(完)


「穂花…泣くなよ。」


掠れた声が聞こえて、わたしはもっと強く目をこする。


「泣いてないっ。」


「俺は、大丈夫だから。」


「っ…。」


涙が溢れてくる。


大丈夫じゃないくせにっ。


本当は辛くて怖くてたまらないの知ってるよっ…?


「だから、俺より良いやつ見つけろよ。俺を好きになんかなるな。」


「っ…そんなことっ、言わないでっ。」


「穂花には、もっといいやつがたくさんいる。俺は、お前をぜってえに離さないって言ったけど、あれは嘘。俺は、いなくなるから、」


「やめてっ!」


わたしが叫んだことによって看護師さんに注意される。


「穂花…だから、もう、来るな。俺のことは、忘れろ。」


わたしは悠のベッドに背をつけてずるずるとしゃがみこんだ。


泣かないって決めたのにっ…っ


そんな悲しいこと言わないでよっ…