淡い桃色の袋で包んだDVDを強く抱きしめる。


君がいつの日だったか綺麗だって言ってくれたワンピースを着て、片手に花束を持って。


ポケットには昨日神社で買ってきたお守りを入れて。


鞄には苦い思い出が詰まったノートが眠っていて。



自動ドアを通り抜ける。

真っ直ぐ歩いて角を曲がって右。


閉まっている扉の前でわたしは深呼吸をする。


まるで心の中で永いこと眠りについていた浦島太郎がが目を覚まして、誰も周りにいなくて寂しがっているみたいに…だけど、懐かしい町並みを歩いてどこかワクワクしているみたいに。


身体中の哀愁溢れるハーモニーが音にならない音楽を奏でている。


少しだけ薄汚れた窓から差し込む日差しがまだらな水玉模様を作って私を誘導している。



絶対に涙は見せない。



そう決めたから。