父にはもうわたしは見えていなかった。



ただ、天国に行ってしまった母の名前を連呼して、壊れた人形みたいに泣き続けた。



わたしはそんなどん底に突き落とされていた父から、一歩、二歩、離れて行った。



「美奈子っ!!美奈子っ!!!」



わたしが公園の一番端まで行った時に、



「清さんっ!」



と一人の女の人が走ってきた。



「っ…美菜子っ、美奈子っ…!」



そう泣き叫ぶ父の肩に腕を回して、強く抱きしめて泣き始める女の人は、


自分じゃない女性の名を呼び続ける父を、咎めることはなかった。



その女性に支えられながら、二人がゆっくりと立ち上がった。


その時、わたしは父と視線が交差した。

























あの日、父がわたしにしたみたいに、


今度はわたしが泣き続ける父から顔を背けて歩み去って行った。