地面に崩れ落ちて号泣する父を、わたしは黙って見つめていた。



それでも、どんなに自分が壊れても、父は決して母の写真を手放すことはなかった。



まるでそれが自分の全てだというように、狂ったように抱きしめていた。



「大切なっ…っ…人の温もりがっ…なくなるってっ…辛いことなんだよっ…っ!」



父は途切れ途切れに叫んだ。



「もうっ、大好きなあの人にっ、っ触れることさえもできなくなるんだっ!ただそっと抱きしめることさえっ…っできなくなるっ…っ。」



その時わたしの脳裏に浮かんだのは、いつもだったら父だったのが、今では、おひさまのように笑うあの人だった。



「何があってもっ、喋れなくなってもっ…っ、動けなくなってもっ、その人の温もりさえあればっ、俺はっ、充分なんだっ!」



いつも冗談ばかり言って笑っているあの人を思い浮かべた。



「…っ、美奈子っ…癌…っだったのに…っ…穂花…っ産んだ。」