玄関のドアから吹き込むのは冷たい冬の風。


鼻の奥がつーんと痛くなって顔をしかめる。


マフラーをぐるぐると巻いて家を出ると、あまりの寒さに老犬クロみたいに身震いする。


今にも雪が降り出しそうな気候の中、わたしは手をポケットの中に突っ込んで急ぎ足で歩き出す。


『南公園で待ち合わせ』


それだけ美菜から伝えられたわたしはバス停まで30分、凍えるような寒さの中を歩き続けた。


美菜とは仲が良いとは言えなけれど、たまに会ったりする。


まるで、二人の間にピンと張った細い糸が切れないように、たまに緩めているような関係だ。



バスに乗り込めば、多少は暖かくなってポケットから手を出してこすり合わせる。


今週で12月へと季節が移り変わる。




一時間ほど乗ってピンポンとボタンを押す。


プシューっという音と共にバスを降りる。




こんなに寒い日に公園で待ち合わせはひどいな、と、頭の中で文句を言いながら道を曲がる。


この公園はよく小さい頃に美菜と一緒に遊びに来た思い出の場所だ。


引っ越す前まではまあまあ近所だったし、美菜とわたしの家の間にある都合の良い場所だったからよく遊びに来たのだ。