悠はごしごしと顔をこすると、赤い瞳でわたしを見上げた。 「穂花は、本当にっ、良い人だよな。」 「えっ…?」 それは、悠だよ。 「穂花は、桜だよ。幸せを運ぶ花。」 そう言うと、悠は小さく微笑んだ。 「悠は、海だよ。大きな海。」 「ははっ、どうかな。」 そして悠が立ち上がったからわたしも立ち上がる。 「暗くなる前に帰んねーと。」 そうつぶやく悠。 「だけど、帰りたくねーなあ。」