夕方の道を歩く。



前方をゆっくりとわたしの歩幅に合わせて歩くのは他でもない君。



「悠…今日は、ありがとね。」


そういえば、


「別に。たまたまあっちゃっただけじゃん?」


そう言って素知らぬふりをする、本当はとても優しい君。


「トイレに行ったのも、本当はわたしたちが話せるようにしたんでしょ?」


「いや、ただ漏れそうになっただけ。」


って、また知らんぷり。


わたしはそういう君だから、こんなにも…大好きなんだ。


わたしが速度を落としてゆっくり歩くと、


悠はそんなわたしに気づいて、同じようにゆっくりと歩き始める。


悠だったらきっと足だって長いし、ずっと早く歩けるはずなのに、そういうところは紳士なんだ。


少し伸びて、たまに目にかかる前髪を骨ばった手でくしゃってかきあげるその仕草も、いつもと違ってなんだか大人っぽく見えた。