中学二年生の春。


毎年桜の季節になると、小さい頃の寂しい思い出となったあの日のことを思い出していた。


お父さんっていう人がいて、大好きなあの人に置いて行かれたんだなあって。




その日は電車で一時間ほどの、海岸のそばの街に遊びに来ていた。


わたしの大親友が住んでいる家がそこにあったからだ。


小学生の時からの大の仲良しで、一緒に泣いたり笑ったり喧嘩したり、いろんなことを共にしてきた一生の友達だった。


ー高橋美菜ちゃん


いつも美菜ちゃん、美菜ちゃん!って呼んでいた。


辛かった時も常に側にいてくれた、家族よりももっと近い存在だったかもしれない。


「美菜ちゃん、着いたよ。」


目的のお店の前にたどり着くと、美菜ちゃんに電話をかけた。


「あいよー!今出張のパパが帰ってきてるからお店の前で待っててね!すぐ行くから!」

「はーい!」

「あっ、絶対に動かないでね!お店の前だよ!お店の前!」

「わかったからー!」


美菜ちゃんのお父さんはすごく忙しくて、まだ一度もあったことがない。

出張もしょっちゅうだし、何より家が遠いから会う機会も少ない。