お父さんはわたしを地面に下ろすと、優しく笑いかけてくれた。



「元気でな。天国のお母さんのためにも、桜みたいに優しい子になるんだよ。」



まるでお別れみたいに言うから、わたしは思わずお父さんの手を掴んだ。




「お父さんは、穂花のこと大好き?」



お父さんはそっとわたしの頭を撫でると、鞄を持ち直した。



「ちょっとおでかけに行ってくるから、良い子にしてるんだよ。」



大きく風が巻き起こる。


桜の木々がざわざわと揺れる。



「お父さんっ…!」


背を向けたお父さんの名を呼ぶ。



だけどお父さんは振り返らない。



「お父さんっ…っ!」



なぜだかわからないけど、もう二度とお父さんがわたしに笑いかけてくれないような気がして、泣きながら大好きな人の名を呼んだ。



「お父さんっ!!!!」