わたしは寝返りをうつと、目覚まし時計の音をオフにして、もう一度静かに目を瞑った。


真っ暗な世界だけれど、どうしてか昔から一人目を瞑っている時が一番安心できた。ぬるま湯に浸かっているみたいに、守られているような気がしたからだ。


暗いけれど、ただ暗いだけじゃない。外の世界を見ていたせいで、突如の暗闇に眼の民が驚いて、黒い一面にぼんやりと虹色の水玉模様を描き出す。

時にそれはユニコーンに見えたり、また時には大きな船にも見えた。

魔法の世界にいるみたいでいつもわくわくした。

現実世界にない自分だけの空間が、昔からわたしは大好きだった。

ー……ペタ……ペタ…

しばらくそうやって目を瞑っていると、薄く開いたドアの隙間から、三毛猫のタマちゃんが侵入してくるのを気配で感じた。

柔らかい肉球が床と擦れ合う音がなんだかくすぐったい。


「ミャー。」


「ぅうー…もう少しだけ寝かせてよお。」


大きなあくびをする。

もう一度目を開くと、そこにはいつもと同じ世界が広がっていた。


悠はきっとまだ布団の中だろうな、って、どうでもいいけどそんなことを巡らす。


今までだったら、まだまだずっと自分の世界に閉じこもっていたかった。だけど今は…


「ミャー。」

「んー、はい、はい。」


わたしは寝ぼけた声を出す。


ー悠がいるから、違うんだ。


「ミャーミャー!」

「はい…起きます。」