その時、


ーガラっ


「…あ。」


いきなり低音な声が聞こえてバッと振り向けば、そこには若干息を切らした悠がいた。


「…何してんの?」


怪訝そうにだだっ広い教室をわたしとをリンクするように眉をひそめる悠。

無造作にスクールバッグを肩にかけ、制服のワイシャツの第三ボタンだけはずれている悠がそこにはいた。


「やっ…ほー。どうしたの?」


そう声をかければ、少しだけ考え込むような様子で教室を見渡していた悠は、我に返ったように答える。


「…あ、教科書忘れた。」

「ふうん。」


そう言ってまた掃除に戻ろうとすれば、もう一度声がして振り返る。


「お前…掃除か?」

「うん…まあ。」

「…………班の人誰?」

どうしてかいつもより低い声に少しだけ驚く。

「えっと…、」

「……お前一人?」



結果的には、ね。


「みんな用事があるみたいで、」

「は?」


悠が少しだけ荒らしくずんずんと近づいてくる。


「五人もいるのに?お前だけ?」


妙に尖った喋り方にビクッとする。


「忙しいんだよ、みんな。委員会とかで。」

「委員会?んなもん…今日ねーよ。」


怒ったような表情をしていた悠だけれど、そのあとに少しだけ眉根を下げた。


「ごめん…俺がいればちゃんとあいつらに言えたのに。」


えっ…

今のでどうやって悠のせいになったの?


でもやっぱり……悠なら、言えたんだよね…。

どうしてわたしはこんなに弱いんだろう。