「床掃きと…黒板と、あと机移動。お願い。」

「了解です…!」


コクっと頷けば安堵の表情を見せてサッと姿を消すガリ勉くん。

わたしは誰もいなくなっただだっ広い教室を見渡す。


ここまで掃除が大好きって訳でもないんだけれど…仕方ない。みんな事情があるみたいだし…わたしは帰宅部で、委員会にも入っていない。暇人が引き受けて当然だよね!


「よし…するか。」


床掃除は隅から隅まできちっとほうきで掃かないと先生から怒られることが多かった。


「あ、あと掃除日誌も書かなきゃ。」


これはみんなが参加したかどうかの確認表だ。


まあ…丸にしておいてあげようか。


床掃除はまだいいのだが、問題は机移動。こう見えても四十五人の大人数のHR。以外と体力を奪われるこの作業に、思わず愚痴りそうになる。


ギィー…ガラ、ガタン。


無機質な音が教室に響く。差し込む夕日がオレンジ色の模様を作り上げていく。

しばらく運んでいると、女子三人組が戻ってきた。


「あっ、すごーい結構終わってるー。」

「ありがとー!」

二人に笑顔で言われ、うん!と頷く。これで三人がまた加わればあっという間に終わる!

「じゃあ、うちらもういらないかな?」

え…?

「ねー!結構進んでるし…綾瀬さん一人でも大丈夫だよね?」

茶髪の女子の視線が少しだけ怖い。


中学の時と似ている。


地味に過ごしてたわたしには風当たりが強かった。


何も発言をしないから強いと思われ、地味に過ごしていたら、いつの間かあまりよく思われなくなっていた。


「じゃああとよろしく〜!」


待って…

なんて言葉は出てこない。


また、一人残されてしまった。