君と僕の遥かな想い

「……あーお姉ちゃんだ」


「……」


昼食後、ジュースを買いに中庭にやってくると、中庭の自販機の前にくるなちゃんと蜜鈴ちゃんのお姉さんなどの友達らがいた。


「あ、蜜鈴じゃん」


「げえ」


よほど会いたくないのか蜜鈴ちゃんは嫌そうな顔をしている。


「ことは♪」


「くるなちゃん」


私の姿を見るなりくるなちゃんは嬉しそうに近付く。


「ジュース買いに来たの?
お姉ちゃんが買ってあげようか?」


「別にいいよ」


「どれ?」


「人の話聞いて」


結局、私の言葉を無視してさっさっとお金を入れて私が好きそうなジュースを渡してきた。


「…いいって言ったのに」


「ふふ♪」


嬉しそうに笑うくるなちゃん。


くるなちゃんは好きでおせっかいをやっているのだろうな。


そんな私とくるなちゃんの姿を見て、蜜鈴ちゃんのお姉さんが「甘やかしすぎでしょ」とぼやつく。


「えっどこが?」


「はあ? いや今の。普通そんな事しないでしょ」


「…だって、ことはだもん」


確かに普通はそこまで甘やかす行為みたいな事はしないだろう。


でも、くるなちゃんは普通とは違うから。


「こんなにかわいいんだから♪」


そう言って、くるなちゃんは私に抱きつくが、私は微笑む事もせず無表情のままだった。


「いや、確かにそうだけど…モテるのはあんたでしょうが。それに、その子とあんたは」


「何?」


蜜鈴ちゃんのお姉さんが言いたい事はなんとなく分かる。


おそらくー。



「あ、月野先輩だ」


「!」


他の生徒がくるなちゃんに向けて喜びの声が聞こえてくる。


それはいつもの事だ。


そして、これもいつもの事。



「あ、妹もいる」


「本当だー」


声のトーンについては、何らか問題ではない。


問題なのは…。



「やっぱりあれだよねー」


「月野先輩と比べるとねー」


「かわいいんだけど、やっぱりね」


いつも、そう。


いつもいつもくるなちゃんと比べられる。


完璧なくるなちゃんと劣等感のある妹といつも言われている。


本当は全くそんな訳ではないのだが、ただ世間からすればそういう印象なのだろう。


別に比較されるのはいい。


いいのだけど、あからさまに私がダメダメな人間にののしあげている言い方がすごく嫌だ。


私はそこまで頭が悪い訳でも何もできない訳でもないのに。