「ねえ、矢吹くんと仲良くなったの?」


「えっ」


くるなちゃんは何気なく矢吹くんの事を聞いてきた。


「えっと…」


「好きになったとかじゃないの?」


(好き…?)


どうだろう…?


少し曖昧な感じはするけど、よく分からない。


ただ、今まで違う感覚を感じたのは確かだ。


確かなんだけど、それが何かは分からない。


「よくわかんないかな…」


そう、よくわからない。


「そっかあ、よかった」


なぜかくるなちゃんは安心したかのように嬉しそうに微笑んだ。


「何が?」


「突然、男の子と仲良くなったから、びっくりしたから、てっきり好きになったんじゃないかって心配してたんだ」


「……」


「ことはは今まで1人の男の子と仲良くした事なかったから、そうなったら嫌だなって思って。ことはは私が守らなきゃいけないから、誰にも渡したくないの」


「くるなちゃん…」


くるなちゃんはある日を境に私に執着するようになって、私に何かあるならば目の色を変えて突っかかるようになった。


傍から見れば異様な光景なのかもしれない。


お母さんが何度も『ことはほんの少し心が弱いだけで、そんなに硬くなにしなくても大丈夫だよ』と言っても、くるなちゃんは決して聞く耳を持たなかった。


それよか、『だめよだめよ! ことは弱いから、守ってあげなきゃ!』といつも強く放っていた。


「………」



くるなちゃんは自分の事もどうだっていい。


私さえ良ければそれでいいみたいだ。


くるなちゃんにとっては、私が無事ならそれだけで安心するのだと。


くるなちゃんの幸せは私だといつも言っている。


それが正しいのか私には少しわからない。



『多分、すぐに会えると思うよ』



「………」


帰り際、耳元でそうささやいた矢吹くん。


それって、もしかして…会いに来るとかそういう事なのだろうか。


「………」


正直言うと会いたくない気もする。


多分、知るのが怖いからだ。


だって私は曖昧だから。


ああ、そうか、矢吹くんも曖昧なんだ。


みんな曖昧ばかりだね。