30分程歩いてようやく駅に着くと、1人の女の子に目が入る。


「………」


「あ、えっと…」


声を掛ける前に先にその子が声を掛けてくれる。


まだ名前を覚えていないのか、曖昧な呼び掛けだった。


「えっと、宇月 柚里夏ちゃんだよね?」


ポニーテールに白いリボンのしたことはちゃんとは別の意味でのかわいい感じの、むしろロマンティックな雰囲気のある女の子だ。


「うん、そう。えっと…ごめん名前なんだっけ?」


「ああ、萩原 矢吹だよ」


「そう、萩原くん!」


名前を言ってようやく思い出しのか、ポンと手の平に丸めた拳を置く。


「萩原くんも同じ学校なんだね」


「うん」


「この辺で言うと、あの学校が一番近いからね」


「そっか、他だと遠いんだ」


「そりゃあねー」



ぼーっと電車がくるのを待っていると、宇月さんがじっと凝視するように見つめていた。


「な、何?」


「ううん、本当に萩原くんって美少年だと思って。
女の子しか見えないよね」


「ああ、よく言われるよ」


「結構、コンプレックスだったりする?」


「別に、見た目に対しては何とも思ってないよ」


「そうなんだ」


「むしろ、存在自体にコンプレックスを感じている方だから」


「へっ?」


別に自分の見た目は幼い頃から言われ続けている事だから何とも思わない。


どちらかと言うと、存在自体が嫌で俺が存在している意味なんかあるのだろうかと、そんな事ばかり考えているくらいだ。



「ことはちゃんって東京に住んでるんだね?」


電車の中で宇月さんにことはちゃんんの事を聞いてみる。


「うん。まあ、あの子はこの町には住めないから」


「住めない?」


「トラウマがあるのよ、この町には。
あの子には少し刺激が強いから」


「トラウマ……」


それってことはちゃんが血がダメな理由と同じなのだろうか。


ことはちゃんは自分の事を知られるのを酷く嫌っているように見える。


それも何か意味があるって事なのだろう。


でも、俺も同じように言える事に近いと言える。



「ところでさ、ことはとはどういう関係の?
友達になるのかな?」


突如話が変わり、宇月さんはなぜか興味津々で聞いてくる。


「友達…なのかな?」


「えっ分かんないの?」


正直、友達と言われてもはっきりと頷く事ができない。


かと言って、友達じゃないとも言い切れない。


「うーん?」


「何その反応?」


いや、友達とは言い切れないと言える。



(あんな事しちゃったからなー)


というか、あんな事してから怒ってないだろろうか?


「やっぱり俺おかしいよなー」


「へっ」


(ことはちゃんと出会ってからなんとなく調子が狂ってる感じがしてしょうがないな)