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「…よし」



朝、身支度をして1階のリビングに降りると、家の人が笑顔で迎えてくれた。



「おはよう、矢吹くん」



「おはようございます」



「わあ、制服すっごい似合ってるね」



恵さんが嬉しそうにペタペタと触ってくる。



「ありがとうございます」



「………」



すると、恵さんは唸りながら制服姿の俺を見つめてくる。


「絶対にモテるよね」


「ああ、確かにかわいいし頭の回転も早いから女の子に人気ありそうだね」


恵さんの言葉にかなるさんが頷きながら納得する。


「…」


正直、「そんな事はない」と言いたかったけどあながち間違っていないから、反対する気もなれなかった。


自分で言うのもなんだけど、俺はかわいい見た目だからよく女子からきゃーきゃー言われる事が多い。


前の高校でも多少そんな感じだった。



「帰って来たら恋人出来たとかならないかしら?」



恵さんはなぜか心配そうに言うと、恵さんのお母さんは「それはないんじゃない?」と苦笑いで微笑む。


「そんな事あるわよ!
今の子は手が早いって聞くし」


いったいなんの根拠でそう言い切っているのだろうか?


いまいち恵さんの理解が掴めず、気にしないで朝食を進めていたら、恵さんが俺の側にやってきて爆弾発言をかましてきた。


「そうだわ! ねえ、こんな事ならあたしと付き合ったら良いと思うのよ!」


「はっ」


「何言ってんの?」


爆弾発言に一瞬空気がピタッと止まったかのように感じた。


いや、本当にこの人は何言っているんだろう。


「あたしね、矢吹くんの事最初から一目惚れしてたの! だから、あたしと付き合って! ていうか付き合いなさい」


しかも命令だった。


普通なら流れで流されるものだけど、俺はそうそう流されるような人間ではない。


「あの無理です。というか嫌です」


俺ははっきりと拒否るように断ったのだった。