「ことはーお待たせ〜。
ごめんね、矢吹くんも待っててくれて」


唐突としてくるなちゃんが駆け足で手を振りながら向かってくる。


「くるなちゃん」


「うん? どうかした?」


矢吹くんと何があったかなどくるなちゃんは察する事もなく、むしろキョトンとしている。


「な、何でもない」


「……」


チラっと矢吹くんの方へと顔を向けると、矢吹くんはニコッとかわいい笑顔を向けられる。


今の矢吹くんの笑顔は反則な気がしてならない。



「じゃあ、またね、矢吹くん」


「うん、また」


「ことはも挨拶した方がいいよ」


「う、うん」


私はいつもの元気な声ではないか細い声で、「バイバイ」と挨拶すると矢吹くんは「うん、またね」と挨拶してくれた。


「………」


矢吹くんは最後の最後まで全てがかわいさで包まれていた。


なんで矢吹くんはこんなにもかわいいんだろう。


「それじゃあ行こっか」


「うん」


くるなちゃんの声に頷き、切符の販売所へと向かおうとしたら、後ろから矢吹くんに手を掴まれ耳元に矢吹くんの吐息が掛かるくらいに近付かれる。


「ふえっ!?」


(なにこれ、また!?)


先程の行為を思い出されるかのように顔が赤くなる。


そして、耳元で柔らかい透き通る矢吹くんの声が響く。


「またね、ことはちゃん。多分、すぐに会えると思うから」とそう囁かれた。


「えっ」


振り向いた時には、既にまた離れていて、同時に切符を買っていたくるなちゃんに声を掛けらる。


「まだ、そんなとこにいたの?」


「今行くっ」


私は慌てて矢吹くんから逃げるようにくるなちゃんの所へ行く。


ちょうど電車が来たので切符を通して入り、くるなちゃんはもう一回矢吹くんに挨拶をするが私はする事なく電車に入ったのだった。



今思えば、矢吹くんとの出会いは偶然だったのか必然だったのか分からないけど、その時の私と矢吹くんとの関係は曖昧だった。