じいちゃんとの暮らしは俺が夢見たかのような幸せな生活だった。


ばあちゃんから戻ってこないかと言われた事があったけど、なぜか戻る気にもなれなかった。


それに、じいちゃんと生活は俺にとって、きっとこれが幸せというものだろうと思ってたから。


だけど、他人の幸せを見てもいっさい羨ましいという感情を持つことはなかった。


というのも、それ以前になんとも思わない人間に対して興味を持つという感情が持てなかった。


なぜ愛情を向けてもない人間に好きという好意向けるのか分からなかった。


なぜこんなにも歪んだ感情になったのかというと、おそらく父親から受けた虐待や愛情を向けて来られなかった感情から出来てしまったのだろう。


他人に対しては嘘の愛想笑いしかできず、また自分の容姿を『かわいい』と連呼されてもバカにされようが他人に興味がないから怒る感情もない。


自分は普通の人とおかしくて欠けている異常な心を持っている事に変とも不思議とも思った事はなかった。


なぜなら、自分はおまけで出来てしまった子でおもちゃのような存在で、感情も自我も必要ないから。


だから、他人の言葉なんてどうでもいい。


何言われようが嘘の相槌を打っておけばいい。


自分の信じたものと愛情を向けてくれた人の言葉だけ充分なんだ。


だから、これからもずっとそんな風に生きていくと思ってた。


別に1人になったとしても変わらなくて、どうせ俺は最初から1人だったかもしれないから。



そして、じいちゃんとの暮らしが5年目がなろうとしていた頃、高校生になったばかりの春にじいちゃんは突然倒れた。



『………』


じいちゃんは末期のガンに侵されていたらしい。


そして、医者からは数ヶ月の命だと知らされた。



その時、゛ああ、結局こうなるのだと。1人になるのか゛と静かにそう思ったのだった。