俺は自分が惨めだとか辛いとか、そんな安易な感情を持つことがなかった。



父親にどんなに酷い仕打ちで傷付けられようが罵倒をされようが、俺にとってはどうでもよくて仕方ない事だと諦めていた。



むしろ、またやられてる、また言われてる、という感覚でしかなかった。



相手にする方が変で相手にしても意味のない人間だから、うっとうしい人間でしか過ぎないから、やりたいだけやらさせておけばいい、そんな気楽な考えを持つようになっていた。


俺はおまけで出来てしまった子供だから、そんな俺の待遇なんか知れてる。


幸せな家庭になるはずがない。



欲を持っても壊されるだけだから。



本当にどうでも良かったんだ、どうにもなろうが。



それに、あの人は俺が死んでようが生きてようがどうでもよかったと思う。



虐待されていつも俺は自室で自我のない瞳で横たわっていて、それを母さんはいつも泣きながら手当てしていた。



『どうして泣くの?泣かないでほしい。俺の為なんかに』といつも思っていた。



叩かれたり蹴られたりして怪我がよくしていたが、そこまで酷いものではなかったので、むしろ暴力はたまに行われるもので、子供だからかもだけど怪我はすぐに治っていた。


父親は俺の存在以上に嫌っていたのは、俺の容姿や頭脳だった。



俺の容姿は完全なる母親似で、顔が女子以上に愛らしく声も中性的で身長も低めだから、男子というよりは女子に間違われる事が多く、女の子みたいな容姿が父親には気に入らないらしく、その上俺は子供らしからぬ鋭さを持ち合わせていて、父親からすれば生意気に見えて、それも気に入らないらしい。



そんな環境の中で育っていった俺は、もちろん自分を好きになる事もできず、外ではいつも嘘という仮面を被って愛想良く振りまき、感情も心もすべてに鍵を閉めてシャットダウンしていた。



だけど、そんな最悪な崩壊状況の家庭環境は唐突に解放という道が訪れた。