「お、お邪魔します」


「うん、どうぞ」


促された丸いクッションの上にと座ると、矢吹くんも少し間を開けた場所に置いてある丸いクッションの上に柔らかく座る。


(あ、ふわふわ)


「あ、お腹すいた? お菓子いる? 飲み物いる?
貰ってこようか?」


矢吹くんはなぜか気を遣ってくれる。


「あ、だ、大丈夫…。てかお菓子あるのね」


そう言ってお菓子が入っている袋を見る。


「うん、作業してたらお腹すいちゃうから」


「でも、ずっと置いておいて大丈夫?
朝晩は大丈夫だけど昼間は暑くなるし」


「大丈夫。キッチンに置かしてもらってるから」


「そっか」


それなら腐る心配ないだろう。


お菓子が入っている袋を見る当たり変色するようなお菓子は入ってなさそうだけど。



「えっとそれじゃあ――ん?」


話しを始めようとしたら、テーブルに置いてある矢吹くんのスマホが鳴ったのでスマホを手にしいじり始める。


「………」


それから5分ぐらい経ってようやくスマホをテーブルに置き話した。


「それじゃあ、始めようか」


「うん。えっと、大丈夫なの?」


「ああ、連絡だけだから」


「そう」


(連絡?)


「それじゃあ、何が聞きたい?」


昨日、おじいちゃんが私に言ったようなセリフで言ってきたのだった。


「えっと、その…」


何を聞きたいと言われても、何を聞けばいいのか分からなくて戸惑いを持ってしまう。


「うーん、じゃあ君の家族ってどういう感じかな」


「えっ」


戸惑っているのに気付いたのか、助け舟的な言い方で聞いてきてくれた。


「普通かな、いつも明るくて賑やかで楽しい。
2歳上にくるなちゃんって言うお姉ちゃんがいるの。優しくて綺麗でおしとやな人で、私とはちょっと正反対なんだけど」


「…そうなんだね」


家族の事を言うと、どうしてもくるなちゃんの事が出てきてしまう。


「仲が良いんだね」


「あ、うん。すごく」


友達や柚里夏ちゃんからにはシスコンって言われる事が多々だけど、それぐらいくるなちゃんが大好きで憧れでもあるんだ。


「やっぱり、家族ってそういうものだよね」


「!」


矢吹くんは浮かなく悲しそうな表情を見せる。


「うちはじいちゃん以外、どんなに頑張っても仲良くなんてできないから」


「!」


おじいちゃんは言っていた、矢吹くんはお父さんから虐待を受けていたと言っていたけど、でも肌が出てる顔や腕や脚のどこ見ても色白で綺麗な肌で痕などいっさい残っておらず虐待されていたような肌ではない。


「あの、どうしてお父さんは矢吹くんを」


「そりゃあ、本命の子供じゃないからじゃないから。
だって俺は父親がうちの母親と不倫した事で出来てしまって子供だから。それがバレて本妻とは別れて成り行きで結婚したんだから」


「えっ」


「だから、おまけの子供なんだよ。妹に可愛がっても俺には可愛がれないんだよ。母親に優しく接せても俺には優しく出来ないんだよ。そして、あの人は母親を利用してるんだよ。本当、最低だよね…」


(………っ)


その時、一瞬矢吹くんの心から黒い何かのオーラが見えて、思わずゾクッと怖く感じた。


なんだろう、矢吹くんのこの違和感……。