「じゃあ、これもそのひとつなの?」


そう言って、持ってきたクローバーのキーホルダーを見せる。


「ああ、うん。そうだよ」


すると、そのクローバーのキーホルダーを手にし自分の所に持ってくる。


(!)


一瞬、萩原くんとの手が触れ、少しだけびっくりするが、萩原くんの方は特に気にしていない様子だった。


「………」


「これは、シンプルなやつなんだ。あまり凝ってない物でね、発明とかするのが好きだからついつい凝っちゃうだよね」


「そうなんだ…」


萩原くんは少し不思議そうな印象があったけど、今回のでほんの少しだけ彼の事を分かった気がした。


なんだろう、このふわふわした感じは。


「すごいんだね」


「へへ、ありがとう、ことはちゃん♪」


(!)


「ん、どうかした?」


突然、下の名前でちゃん付けで、しかも男の子からそういう呼び方をされたのは初めてだから驚いてしまった。


基本は、苗字でさん付けか呼び捨てなので、中津くんからでも呼び捨てだから。


「あ、いや…家族以外の男の子でそういう呼び方されたの初めてで」


「あ、そっか、普通男子ってそういう呼び方しないもんね。ごめんね、ずうずうしかったかな?」


「いや、びっくりしただけで」


「同い年だからいいかなって思って。それに、同じ家にいるのに、苗字っていうのもなんかね」


「……」


確かにそうかもしれない。


同じ家なのに苗字で呼んでいたから、変じゃないかなって思っていたけど。


「じゃあ、私も矢吹くんって呼んでも」


「うん、ご自由に。
俺もそういう呼び方はあまりないから新鮮だね」


そう言って、矢吹くんはふわっとはにかむ。


「………」


やっぱりこのふわふわな気持ちはなんだろう。


彼と話しているとそんな不思議な感情が出てくる。



「それで、何か用事?」


「えっあ…」


そうだった、忘れてた。


矢吹くんの部屋に行ったのは、荷物整理を手伝おうと思ったからだ。


矢吹くんの作品を見てて忘れる所だった。


「荷物整理手伝おうと思って」


「ああ、そうだったんだ。でも、大丈夫だよ」


「そっか」


「うん、ありとうね」


速攻で断られてしまった。


結構ダンボールが多かったし、手伝ってあげても良かったけど、しつこく言ったら迷惑だろうけど。


(まあ、いっか。友達の家にでも挨拶しに行こう。
昨日、行けなかったし)


そう考え、矢吹くんの部屋を後にしたのだった。