「ここ、俺の部屋で逃げ場所」
その後、矢吹くんが3階のとある部屋に案内してくれた。
「逃げ場所?」
「うん、住んでた家と唖桐の家がすごく近くて、よく逃げてたんだ」
「そうなんだ…」
家をよく行っていたくらいだから、すごく仲がいいんだ。
「いつから仲が良かったの?」
雫鈴先輩とは1つ上だし、小学校だとそこまで関わりもないし。
あれかな、習い事とかクラブ活動とか地域の集まりとかそういうものだろうか。
「何だったけなー」
「確かあれじゃね?」
雫鈴先輩が思い出すように言う。
「あーあれか」
「泣いてたもんな、道端で。それも俺の家の前で」
「うん…そうだったね」
「?」
(泣いてた?)
私が想像していたものとはなんだか違う言葉が出てきた。
「ちょうど、母親と買い物行っていた帰りに、道端でべそべそと泣きながらゆっくりと歩いていたんだよ」
「えっ」
「で、うちのお母さんがびっくりしちゃって、慌てて駆け寄って声を掛けたんだよな。でも、ずっと泣きじゃくて止まらなかったから、ちょうど家の前だったから家に上がらせて落ち着かせてあげてたんだよ」
「でも、なんで泣いてたんですか?」
矢吹くんから聞いているから、なんとなく理由は分かる気もしなくない。
「追い出されたんだよ、邪魔だから出ていけって」
「ああ…」
やっぱりそうなんだ。
「まあ、その後送ってくれた時に、ちょうど母さんが探しに来てくれて。その後、何度かそういう事があって、その度に偶然会ってて、そしたら避難しに来たらいいって言ってくれて、気付いた自分の部屋を与えてくれたんだよ」
「そうだったんだ…」
想像以上に斜め上の出会い方にびっくりしてしまった。
「唖桐とは歳が近かったから、すぐ仲良くなったんだよ」
「………」
「唖桐は俺にとってちょっとだけ特別なんだ」
「えっちょっとだけ?」
「ちょっとだけ」
「いやいや…ちょっとだけはないだろ?
俺めっちゃお前の事を理解してあげてるし、信頼持ってくれてるよね?」
「うん、でも。ちょっとだけ」
「なんでだよっ」
なんだか素の矢吹くんを見たようで、少しだけ嬉しくなった。
雫鈴先輩の前だと少し別人に見えるけど、これが本当の矢吹くんなんだなって思う。
その後、矢吹くんが3階のとある部屋に案内してくれた。
「逃げ場所?」
「うん、住んでた家と唖桐の家がすごく近くて、よく逃げてたんだ」
「そうなんだ…」
家をよく行っていたくらいだから、すごく仲がいいんだ。
「いつから仲が良かったの?」
雫鈴先輩とは1つ上だし、小学校だとそこまで関わりもないし。
あれかな、習い事とかクラブ活動とか地域の集まりとかそういうものだろうか。
「何だったけなー」
「確かあれじゃね?」
雫鈴先輩が思い出すように言う。
「あーあれか」
「泣いてたもんな、道端で。それも俺の家の前で」
「うん…そうだったね」
「?」
(泣いてた?)
私が想像していたものとはなんだか違う言葉が出てきた。
「ちょうど、母親と買い物行っていた帰りに、道端でべそべそと泣きながらゆっくりと歩いていたんだよ」
「えっ」
「で、うちのお母さんがびっくりしちゃって、慌てて駆け寄って声を掛けたんだよな。でも、ずっと泣きじゃくて止まらなかったから、ちょうど家の前だったから家に上がらせて落ち着かせてあげてたんだよ」
「でも、なんで泣いてたんですか?」
矢吹くんから聞いているから、なんとなく理由は分かる気もしなくない。
「追い出されたんだよ、邪魔だから出ていけって」
「ああ…」
やっぱりそうなんだ。
「まあ、その後送ってくれた時に、ちょうど母さんが探しに来てくれて。その後、何度かそういう事があって、その度に偶然会ってて、そしたら避難しに来たらいいって言ってくれて、気付いた自分の部屋を与えてくれたんだよ」
「そうだったんだ…」
想像以上に斜め上の出会い方にびっくりしてしまった。
「唖桐とは歳が近かったから、すぐ仲良くなったんだよ」
「………」
「唖桐は俺にとってちょっとだけ特別なんだ」
「えっちょっとだけ?」
「ちょっとだけ」
「いやいや…ちょっとだけはないだろ?
俺めっちゃお前の事を理解してあげてるし、信頼持ってくれてるよね?」
「うん、でも。ちょっとだけ」
「なんでだよっ」
なんだか素の矢吹くんを見たようで、少しだけ嬉しくなった。
雫鈴先輩の前だと少し別人に見えるけど、これが本当の矢吹くんなんだなって思う。


