「はい、どうぞ」


「ありがとうございます」


2階のリビングに案内してもらい、雫鈴先輩がお茶をだしてくれた。


「………」


ちらっと矢吹くんの方を見ると、お姉さんは矢吹くんにくっついて床に座っていた。


「だーもっ鬱陶しい! 離れろ、暑い!」


「なんでそんな酷い事言うのよー。
ふーくんのいじわる」


「大したものないけど、はいお菓子」


「いえ、おかまいなく」


お姉さんの奇行に雫鈴先輩は無視するように私の対応をしていた。



「なあーもう、なんとかしてよ、これ」


お姉さんを「これ」扱いされてる。


矢吹くんは呆れすぎて対応に困り果てていて、ようやくして雫鈴先輩に助けを求めた。


「しょうがねーな」



雫鈴先輩は少し渋々承諾して、お姉さんに所に向かって。


「いい加減、離れろ。このバカ姉貴」


「なっ姉に向かってバカ姉貴ですって!
なんて酷い弟なのっ」


「嫌がってるのが分かんねーの?」


「違うわよ。照れ隠しよ」


「どこがだよ」


「こんな綺麗なお姉さんに行為を向けられるなんて、素敵でしょ?」


「すんげー自信だな。逆に引くわー」


「なんて事言うの! ほんと失礼な弟ね!」


雫鈴先輩とお姉さんが言い合いしている内にしれっと矢吹くんは立ち上がり、私が座っているソファに座ってきた。


「!?」


しかも隣に。


私が座っている場所が真ん中ではなく、右よりというのもあって、矢吹くんが隣に座るともう一人座るのは厳しいくらいな微妙なスペースが空いているだけにだった。


おそらくお姉さんが隣に来ないようにする為なんだろうけど。


こっちに来るのを分かっていたのか、矢吹くんの前にはカップが置いてあった。


そのカップのお茶を一口飲むと、疲れなのか「はあ」と溜め息を付いた。


「大丈夫?」


「うん? ああ、平気」


「そう」


心配気に聞くと、お姉さんとは違って優しく言ってくれた。



「………あ、あの」


「あーなんで、そっち行ってんのよ!」


「お前はここにいろ」


「酷いー!」


矢吹くんにさっきの事を聞こうとしていたら、お姉さんに遮られてしまった。


やはりお姉さんが来ないようにする為だったんだ。