「!」


そっと覗くように彼に近付くと、彼の手には何やら機械のような物を持ってドライバーを回していた。


(物作り?)


萩原くんの斜め後ろで中腰になりながらじっと作業を見つめていた。



それから5分が経過して⸺。


「ふう、終わった。ん? わっ」


「あ…」


集中しすぎて私の存在に気付いていなかったのか、作業が終えて集中が切れたのか、ようやく私の存在に気付いてくれた。


先ほど、何度も呼びかけても返事しなかったのは、集中していたからであろうと思い、終わるまで声を掛けずにいた。


いきなり私がいたせいなのか、萩原くんはとても驚いた反応を示した。


「いっ…いつからここに?」


「何度も呼んだんだけど…」


「えっ…あーごめんね。壊れてた物があったから直して気づかなかったんだと思う」


「そうなんだ」


じっと萩原くんが持っている物を見やる。


(なんだろう、これ。…時計?)


私の視線に気付いたのか、彼は少しだけ嬉しそうな彼でにこっと笑顔を向ける。


「気になる、これ?」


(!)


向けられた彼の笑顔に思わず「かわいい」っと思ってしまった。


「う、うん…」


「これはね、時計だよ」


「時計?」


それにしても、どこかで売っているようなデザインではなさそう。


むしろとてもおしゃれだ。


「か、かわいい時計だね。木の形で」


「でしょう。面白い形してるでしょ。色々凝ったんだよー。これは、俺専用デザインだから違うけど、この時計人気なんだよ」


「人気? 何かやってるの?」


どういう意味なんだろう「人気」って。


「ああ、そうじゃなくてね。知り合いの雑貨屋さんがいてね、『ぜひ、俺の作品を店〈うち〉で並べたい』って言ってきた人がいてね。その人のお店で並べてもらってるんだ」


「それって小物作家?」


「ああ、そういうものとか言ってたね」


小物作れちゃうなんて驚きだ。


「す、すごいね」


「えへへ、ありがとう。
単に物づくりや発明が好きなだけだよ」


「それでもすごいよ、TVとか来そう」


「内緒にしてるからそれは来ないと思うけど」


「あ、そっか」