「ねえ…」


私が体育館を出た後、何か私に言ったりしていなかったか気になった。


「ううん、なんでも」


「………」


きっと冬央ちゃんは私が聞こうとした事に気づいる。


きっと分かってるから。


どうせまた余計な事を言われてるって。


しょうがないから諦めるしかないから。



「あ、あのね…えっと。そうそう!」


冬央ちゃんは私に気を遣って、わざわざ話題を掘り出す。


「今日相手した女子バスケ部がことはの事聞いてきたよ」


「そうなんだ」


まあ、だいだいは想像できるけど、おそらくは。


「いつもと同じでしょ?」


「まあね」


「バスケ部入ってないの?」とかそういう類のものだろう。


そりゃあね、できれば入りたいと思ってるよ。


でも、無理だから、難しいから。


それに私は…そんなに心が強くない。



「ねえ」


「ん?」


「あのね、今日楽しくなかった?」


何気なく聞いてきた言葉に冬央ちゃんは少しだけ不安そうだった。


「えっと…そうだね。ちょっと辛かったかな…」


「そ、そっかあ…」


私の言葉に冬央ちゃんはやはりという表情を見せていた。


「でもね、でも…練習は楽しかったよ」


ぎこちなく言った言葉に冬央ちゃんは少しだけぱあっと明るくなった。


「そっかあ!」


よっぽど「楽しかった」という言葉が嬉しかったのか、笑顔を向けてくれた。