早く早く息を整えなきゃ。


誰もいない場所で吸入器を吸入しないと、呼吸が…。


だけど、足が上手く歩けずよろけてしまいがちで、先程まで動かしていたはずの足が重く、体全体に力が入らない感じだ。


「はあ…はあ…はあ」


(もう…だめ…)


意識が途切れそうになり、体がゆらっとふらついた。



「あぶない!」


誰かの声と誰かが私を掴む感触を感じた。


(誰…?)


くるなちゃんじゃない…。


そこで、私の意識は途絶えてしまった。




『何それ〜』



『変だよ』



やっぱり、私はみんなからすればおかしいのかな。


くるなちゃんでさえも、理解してくれるけど、してくれない事がよくある。


くるなちゃんは優しいけど、時々冷たい。


そんなくるなちゃんが私はあまり好きじゃない。


分かっていても、どんな事に対しても理解を求めるのは難しいだろう。



矢吹くんはどうだろうか。


矢吹くんは…理解してくれるのかな。


難しいかな。


悲しいな。



ああ、消えたい。


消えていなくなりたい。


また、心の闇に飲み込まれそうなる。


怖い。


誰も理解してくれない感情とは、いたたまれなく苦しい。


目なんて覚めたくない。


覚めると怖さと疎外感が募るから。


みんな勝手な事ばかり言うから。


だったら、ずっと眠れるものなら眠っていたい。


そうすれば、嫌な言葉も視線を向けられず済むから。


何も考えたくない、何も知りたくない、何もわかりたくない、何も気付きたくない、何も何も…。


私はずっと自分から怖がって逃げていて、自分の心と立ち向かおうとしていないんだ。


それは悪いとか、それは良いとか、それは間違っているとか、自分の心で言い聞かせているはずなのに、それをわざわざ何もなかったかのように心にそっと閉まっている。


本当の思いに目を向けたら、私は私では居られなくなる。


何より怖いのは自分の心だから。


心を知るぐらいなら最初から知らなければいい。


怖いなら見ないふりを繰り返せばいい。


それが一番いいから。