君と僕の遥かな想い

「はあ…はあ…はあ」


ダメだ…呼吸が上手くできない。


いつもそうだ。


心が不安定だと気持ちが辛くなって、他人からの心のない言葉が重みとなる。


くるなちゃんが入ってくると、心がズシッと傷つくような感情になる。


だから嫌だったんだ。


こうなる事分かってたから。


だから、本当は出たくなかったんだ。


こうなる事を予想してたから。


助っ人をする度にどこからとくるなちゃんは聞き付けて観に来るから、その度にくるなちゃんに憧れを持ってる人や好意を持っている人達も付いてきては、私の姿に言いたい放題に比較して文句を言われる。


だから、もうずっとこんな状態が続いてて、無理すればすぐにへばってしまう。


治したいのにどう頑張っても治らないから。


自分が嫌になる。


悔しくて辛くて…。


どうすればよかったのだろう。


どうすれば…苦しさから解放されるのかわからない。



「ことは!」


ふいに心の中の感情から我に戻る。


「!?」


そうだ、今まだ試合中だった。


向けられたボールを受け止めようとボールへ手を伸ばしたその時、白昼夢みたいな感覚に襲われた。


駆け回る子供達、でも私は上手く息が出来なくて、苦しくて辛くて、片隅にくるなちゃんの冷たい顔が見えた。



「ことは!」


冬央ちゃんの声にまた我に戻る。


顔を上げるとパスされたボールが横をすり抜けていった。


「あっ」


私は慌ててボールに飛び込むように、相手の手に渡る前に先に掴んだ。


「っ」


ボールを掴んだ一瞬、くらっと目の前がふらついた。


(まだ…大丈夫…大丈夫!)


心の中で自分に言い聞かせて、無理した体調のまま必死にゴールへとめがけた。



《ピー》



笛の音が鳴り響いてようやく試合が終了した。


結果は無事私達が勝ったようだ。


みんなが喜んでいる中、頭が朦朧としていた。


限界だ。


これ以上は倒れてしまう。


息が上手くできない。


「はあ…は…はあ」


「ことは、やったね!
さっすがあ!いやあ、こんな熱い試合は久々だなあ」


「はあ…はあ…はあ」


「ことは? 大丈夫?」


「ごめ…ん…ト…トイ…レ」


「あ、うん」


声がかすれてうまく出せず、ふらふらした様子で体育館を出る。


冬央ちゃんは心配そうな表情で私を見つめていた。


体育館を出る時、くるなちゃんの方へと微かに見たが既に居なく、どうやら先に帰ったようだ。



今、誰かに何か言われてしまったら、私の心が本気でおかしな事になって倒れる。


お願い誰も話しかけないで…。


いつだってどんな時も私の願いはすぐそこで砕ける。


砕けて壊れてしまうから。