夕食後、しばらくしてお姉ちゃんが「ことは。次、お風呂入りな」と言われたので、2階の自分の部屋からパジャマを取りにに廊下に出ると、玄関前におじいちゃんがウロウロしていた。


それは、なんというか不審者のようだった。


「……」


私は気にすることなく、むしろスルーするかのように2階へと上がった。


パジャマと下着を手にし、階段を降りようとしたその時⸺。


《ピーンーポーン》


と、心地いい程に響く家のチャイムが成り響いたのだった。


こんな時間に誰だろうと思いながら階段を降りて行くと、玄関前にいたおじいちゃんは待ってましたかのように玄関扉を開ける。


(もしかして、さっき言っていた子?)


そう思い、少し興味本位で覗くように階段から玄関を見る。


「すいません、遅くなってしまって。
友達の家に行っていて」


「いや、大丈夫だよ。さあ、どうぞ」


「おじゃまします」


「うん、ようこそ。
じゃあ、みんなを紹介するんで、おいで」


「あ、はい」


と、おじいちゃんはこちらを振り返る。


「ことはちゃん? そんなところで覗いて何しとん?」


「あ、いや別に」


「挙動不審になってんよ」


(おじいちゃんに言われたくないんだけど)


少しきょどきょどしながら階段を降り、おじいちゃんの前に立ち視線を向ける。




「えっ」




それは、あまりにも驚いた。



これは、何か意味があるのかと、それぐらい驚いてしまった。



「君はホームの女の子」


「あ……」


(この子がおじいちゃんが待っていた子?)


全然年上ではなく、むしろ私と同い年ぐらいだった。


私と同い年にしては、歳の男の子のわりには少し背が低いが。


(まあ、私も人の事は言えないが…)


「もしかして、2人は知り合いだったのかい?」


「えっいや…」


知り合いという訳でもないし、むしろ赤の他人で、そもそも名前も知らない仲であるから。


「いや、違いますよ。単に俺のあやまちでぶつかってしまって、それが彼女だった訳です」


「あー事故なんだ、それは驚きだ。
まるで、ちょっとした運命ってやつか」


(…運命って)


何気にロマンチックな事を言うおじいちゃん。


別に運命って訳ではないとおもうが、むしろ偶然? たまたま? だと思うが。


「さて、みんなを紹介するからおいで。ことはちゃんもおいで、すぐ終わるから」


「はい」


「うん」



彼とのこの再会は運命だったのだろうか、この時はそれさえもよくわかっていなかった。


ただ、不思議な事もあるんだな、という感情しかなかったのだったから。