春になったら君に会いたい


のぞみが俺と同じことを考えて言ったのかはわからない。それでも良かった。

好きな子と出した結論が同じだった。それだけで十分嬉しい。

もう完璧に惚れてるんだな、なんて今更ながらに思い知らされた。




それからはいつも通り他愛のない話をした。
話して、聞いて、笑って。


とても楽しかった。でもそれと同時に胸の奥が痛かった。

いつまでもこの時が続いたらいいのに、なんて女々しいことを考えてしまう。運命には抗えないということをよく知っているだけに尚更辛かった。



「またね」

帰り際、病室を出ていく俺にのぞみがそう言った。顔には満面の笑みをたたえている。


果たして俺はあと何度彼女の笑顔を見られるのだろうか。

そんなこと考えたくはないのに、つい考えてしまう。勝手に苦しくなって涙が出てきそうになる自分が嫌だ。


「またな、のぞみ」

それでも笑って言う。彼女が受け入れてくれた日を涙で終わらせたくなかった。


閉まっていくドアの向こうでのぞみが髪を耳にかける。

その髪を耳にかけるしぐさは、苦しいときに出るのぞみの癖なんじゃないかと気づいた。


自然と胸の痛みは激しくなっていた。