春になったら君に会いたい



「で、今日はどこに連れてってくれるの?」

「着いてからのお楽しみ。つっても、楽しんでもらえるかわかんないけど」

「冬くんと一緒ならどこでも楽しいよ」

「……っ」

ちょっと前から思っていたが、のぞみは小悪魔系だと思う。素かわざとかわからないが、俺を惑わせすぎだ。



「じゃ、行こうか」

照れ隠しのように言ったその一言で、俺たちは歩き出した。





駅から住宅街を抜けたところに最初の目的地がある。そこまでは二人で喋りながら、ゆっくりと歩いた。


「はい、最初の目的地はここ」

大きな建物の前で立ち止まる。話すのに夢中になっていた彼女が顔を上げてキョトンとした。

「美術館?」

あ、この反応やらかした。そう思った。

俺の好きな場所だからここを選んだが、ぶっちゃけ急に連れてこられても困るだろう。のぞみと美術の話になんかなったことないし。


「……あー、ごめん。他の場所がいいよな」

「え、ううん! ここがいい!」

「えっ?」

まさかの反応についそう返してしまう。


「私美術館って来たことないから、ちょっとびっくりして」

「え、小学校の遠足とかで来なかったの?」

「あー、病気で遠足とかほとんど行けてなかったから」

のぞみが悲しそうに笑った。その姿に胸が痛くなる。


なんで簡単に言ってしまったのだろう。のぞみが病気だって知っていながら、なんで傷を抉るようなことを。

あまりにも馬鹿すぎた。自分だって冬のことを言われたら、耐えられないくせに。


「ごめん」

うっかり出てしまった暗い声すら憎い。ここで謝ったりなんかしたら、もっと傷つけるだけなのに。