春になったら君に会いたい






さて、ついに今日はデート当日だ。


電話した日の二日後、俺は正晴に服を貸してもらった。俺に合うのを用意しておいてくれたらしく、自分ながらにそこそこ似合っている。

髪型はワックスを使って軽くいじった。あまりやりすぎると意識していることが丸わかりだから、というアドバイスがあったためである。それでも、服に合っていて、サマにはなっていると思う。



十時、駅前の大きな時計の下に集合。
そういう約束だ。

もともと五分前行動が身についている俺は、九時五十五分に着くように家を出た。




「あ、冬くん! おーい!」

もう少しで時計の下に着く、というところで大きな声が聞こえてきた。声の方向に目を向けると、のぞみが背伸びをして手を振っている。俺は急いでそこへ走った。


「わりぃ、待った?」

「待った待った。めーっちゃ待ったよ!」

「う、ごめんなさい」

のぞみが頬を膨らませて言うので、真面目に謝った。

彼女は早めに来るタイプのようだ。




「ふふっ、冗談だよー」

俺が真剣に謝ったのがおかしかったのか、急にのぞみは笑った。どうやらさっきのは本気ではなかったらしい。


「冬くんと遊びに行けるんだーって思ったら、楽しみすぎてつい早く来ちゃっただけ」

ペロっと舌を出して言う。
それがあまりにも可愛くて、ドキッとしてしまった。

なんかずるい。俺が思ってても言えないようなことをさらっと言われてしまう。リードしたいのに、してやられてばかりだ。


「冬くん今日いつも以上にかっこいいねぇ」

ほら、また。
俺からのぞみの格好を褒めるべきなのに、先に褒められた。嬉しくないわけではないが、地味に悔しい。


俺も負けじと褒めようと決めた。いや、そんな決意をせずとも、彼女は可愛いのだが。

病院ではラフな格好をしていたので、のぞみのちゃんとした私服を見るのは初めてだ。白いスカートに水色のトップス、髪は緩く巻かれている。メイクはしていないようだが、元の素材がいいからか顔も服に負けず可愛らしい。


「のぞみも可愛いね。ちょっとお嬢様っぽい」

俺が内心結構照れながら言うと、のぞみははにかんだ。

「えへへ、嬉しい。でも、お嬢様なんて遠い存在だけどねー」

そう俺に笑ってくる。

それも可愛くて、まだ集合したばかりなのに俺の心臓は強く波打っていた。